ストーリー
ようやくこの日が来ました。ゆり子さんは2歳半の息子の翔太くんを保育園につれて行きました。最近、ゆり子さんと旦那の正之は、息子がいつも部屋の隅に一人で遊んで、群衆に近づくのが好きではないことに気づきました。他人に声をかけられても、返事しません。翔太くんは一人っ子なので、性格が閉鎖的になるかもしれないかな、保育園に通い始めたら、状況は自然によくなると、ゆり子さんと正之さんはそう信じています。
ゆり子さんと翔太くんは教室に入ると、保育園の先生が子供たちに靴紐を結ぶことを教えていました。先生に挨拶してから、ゆり子さんはすぐに屈んで、後ろに隠している翔太くんを落ち着かせます。同時に、ゆり子さんは自分の靴紐を緩ませて、先生に結び方を学ぼうとするようにしました。
ゆり子:これは何ですかね?
翔太:これは...これは何ですか?
[瞳がじっと遠くを見つめたまま]
ゆり子:そう、お母さんのところを見て、これは何ですか?
翔太:そう…そう…
[瞳がまだじっと遠くを見つめたまま]
ゆり子:先生とクラスメートのところに行って、一緒に靴紐の結ぶ方を学びましょう!きっと楽しいよ。
[ゆり子さんは翔太くんの手を握って、クラスメートのところに行きました]
この瞬間、翔太くんが突然にキレちゃって、地面から拾ったものを乱暴に投げ始めました。疲れたたら、床で転んだり、叫んだりして、まるで無形の怒りがあるようで、隣の靴紐の結び方を学んでいる皆さんが驚かせました……
一体、何が起こったのか?どんな理由で、翔太くんはそんなに激しい反応がしましたか?あなたのそばにも、翔太くんのように群衆との交流に抵抗したり、周囲の環境の変化に敏感であったりする家族、友人、同窓または学生がいますか?あるいは、あなたは翔太くんの反応に共感できたり、理解できたりしますか?
実際には、翔太くんはこの世界での1,000万人以上の人々と同様に[1]、一般に「自閉症」として知られる疾患に苦しんでいます。正直に言うと、「自閉症」という言葉は完全に正しいわけではありません。アメリカ精神医学会(American Psychiatric Association, APA)に出版された《精神障害の診断と統計マニュアル》の第5版(DSM-5)により、「自閉症」の臨床専門用語は「自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder, ASD)」です。なぜなら、この神経発達障害がある子供たちはそれぞれ、社会的、感情的、行動、および学習など異なる障害があります。一部の患者さんは、スペクトルの最左側の高機能自閉症に属し(例えば、アスペルガー症候群)、学習と生活方面にはそこまで苦しいが、一部の患者さんは、スペクトルの最右側の低機能自閉症に属し、知能とセルフケア能力には、はるかに常人に及びません。
[1] 世界保健機関(World Health Organization, WHO)の最新の統計により、世界中で160人の子供のうちに、1人が自閉症と診断されたと推定しました(WHO, 2019)。
今日は、「自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder, ASD)」こいう発達障害についてのことを紹介します。そして、どのように巧妙な方法を使用し、障害がある家族、友人、同窓または学生を支えたら、彼らは靴紐の結ぶ方を学ぶことから、ゆっくりと社会生活に溶け込むことができるようになるのも説明します。
自閉症スペクトラム障害 (ASD)
DSM-5により、ASDの人には主に次の2種類の症状があると述べています[2](APA, 2013, p. 50):
一、社会的なコミュニケーションが苦手
(Deficits in Social Communication and Social Interaction)
- 他人と交流する時、相手の感情を感じることができず、適切な言葉、感情、表情のフィードバックを与えることもできない。
- 他人とコミュニケーションするとき、視線があいにくく、相手の話を聞いていないのよう。
- 他人との関係を結ぶことが苦手で、他人とのやりとりに興味なく、自分の世界に浸かっているよう。
二、特定の行動を繰り返す
(Restricted and Repetitive Patterns of Behavior and Activities)
- あるアクションを繰り返す。例えば、おもちゃを並べること、ものを動かすこと、他人が言った言語を繰り返すことなど[3]。
- 同じアクションや日常生活習慣に非常に執着しており、変化が起きると極めてイライラし、怒り、がっかりしなりやすい。
- 自分がやりたいことに夢中、外からの邪魔に堪らなく隣の空気を読めないよう。
- 外からの邪魔に非常に敏感で、激しい反応を起こしやすい。
[2] 第一種類の症状しか持たない場合、現在はアメリカ精神医学会により、自閉症スペクトラム障害ではなく社会的コミュニケーション障害(Social Communication Disorder)と診断されています。
[3] 翔太くんのような自閉症スペクトラム障害がある子供は、よく他人が言った言語を繰り返すことがあります。医学的には「反響言語」(echolalia)と呼ばれます。
ASDの子供に付き添い、セルフケア能力を身につけさせる:靴紐を結ぶ
オークランド大学(University of Auckland)の研究チームは、一人の14歳の子供に実験した後、自閉症スペクトラム障害がある子供たちに、漸進的に靴紐の結び方を教えるより、「後向き連鎖」(backward chaining)という方式で子供たちを導く方がいいことを発見しました(Sadlier, Dixon, & Moore, 1992)。人に靴紐の結び方を教える時、多くの場合には、最初のステップから最後のステップまでこういう順序で教えますが、「後向き連鎖」という教授法では逆に最後のステップから最初のステップまでこういう順序で進みます。つまり、教育者は最後のステップを残し、子供たちに最後のステップから学ばせます。それに、子供たち自分の力で靴紐を結びつけるのを助けることも、子供たちが靴紐を結ぶことへの興味をあげさせられます(Rayner, 2011)。このようにしたら、子供たちは自信がだんだんついていく、最終、自分の力で靴紐を結ぶことができるようになりました。
これに対して、別の研究では、ビデオを使用して(video-based intervention)、ASDの子供に最初のステップから最後のステップまでこういう順序で靴紐の結び方を教えるなら、子供たちは多くても三つ目のステップまでしか進めません。しかも中等度の自閉症であろうと重度の自閉症であろうと、結果は一緒です。たとえビデオにうつているのは両親や兄弟でさえ、結局も同じです(Rayner, 2011)。したがって、研究者はさらに、靴紐を結ぶことや料理することなど段階的な生活行為では、教育者は「後向き連鎖」(backward chaining)という方式を使用し、ASDの子供たちに有効な支援を通し、生活スキルを身につけさせたり、他人とうまく付き合えるようにさせたりする方がいいと述べました(Rayner, 2011)。
このブログを読んだ後、あなたもASDへの認識が深まり、ASDの人のつらさと無意識な失礼などを理解できるようになりましたかな?今度ASDの子供たちに靴紐を結ぶこと教える機会があれば、きっと自信満々ですよね。もうやり方を知っているから。
參考資料:
- APA (2013). Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed. Arlington, VA: American Psychiatric Association.
- NIMH. (n.d.). Autism Spectrum Disorder. NIH. Retrieved from https://www.nimh.nih.gov/health/topics/autism-spectrum-disorders-asd/index.shtml
- Rayner, C. (2011). Teaching students with autism to tie a shoelace knot using video prompting and backward chaining. Developmental Neurorehabilitation, 14, 339-347.
Sadlier, J., Dixon, R. S., & Moore, D. W. (1992). Use of changing criterion procedure incorporating backward chaining to teach an autistic youth to tie shoe laces. Australian Journal of Special Education, 15, 14-16. Retrieved from https://www.cambridge.org/core/services/aop-cambridge-core/content/view/EA37BED8BAAB547216970BA6CEA5822F/S1030011200022508a.pdf/use_of_a_changing_criterion_procedure_incorporating_backward_chaining_to_teach_an_autistic_youth_to_tie_shoe_laces.pdf
- WHO. (November 7, 2019). Autism spectrum disorders. World Health Organization. Retrieved from https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/autism-spectrum-disorders